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先生がいなくなってから、今日で4年です。先生。

私は先生が不在になって、4年過ぎても、先生のことが好きです。

人を人が好きでいられるのは4年までだと。好きは脳内麻薬だから続くものではないと。
わたしは先生がいなくなってから、1年目にその話を読みました。

あの頃の私は歓喜しました。今の痛みは4年で消える。4年経った私に、涙などなく。眩しいであろう人生が広がっている。

愛し、愛返されるという健全が適応される。それまで待とう。4年を偲べば。喪に服せば。私にも。

どうだろう。4年経った私にあるのは。満席のフードコートで、1人、席を探すような。耳を塞ぐ両手は食べたくもないものが乗ったトレーで塞がっている。凡庸で取るに足らない騒音。

私は牢獄に入りたいのだ。なにか大きな罪を犯したに違いない。

罰してくれ、私の人生を。人生たらしめるものを台無しにしてほしい。

自暴自棄の味をしめて。実にくだらない会話の際の偶然の言い誤りのような。即席の犯罪でも起こして。
ニュースで流れたとき。あの女は馬鹿げている。非常に頭が悪いに違いない。こんなことで前科がつくなんて。と、酒の肴になる。そんな嘲笑を。

私は涙に理屈を着たい。

私が先生を好きだという不可解。
私の身体はあの日診察室に置いてきてしまって。
それから私は死体のように生きた。生きた心地がしないまま。しかし生きた。

愛というものの捕らえかたを、私は知らない。矢を射る者が、きっと見当はずれの場所に射ったのだ。私に落ち度などない。

片思いという純水が、泥水になることに知らぬ存ぜぬを突き通して。

淡々と、生きる。先生のいない世界を、ただ淡々と。
電車を待つ時間。赤ん坊の乗ったベビーカーが私の隣に来る。赤ん坊と目が合う。
私は笑いかける。可愛らしい。そう思うようにしている。私はどこか気持ちよくなる。
赤ん坊に笑いかけられる自分に。嫌悪と恐怖の塊に、微笑むことができる自分に。私は狂ってなどいない。私は優しい。そうでしょう、こんなにも笑いかけられる。可愛いと思うようにできている。私は正気だ。

私はこれからも、ずっと先も、その向こうでさえ。先生を失うことしかできない。
先生を失い続ける世界に愛された。その理不尽をしゃぶる。味がなくなるまでしゃぶる。

私はできるだけ長く生きて。死体みたいに、なにか決定的なものが抜け落ちたまま。長く、誰よりも長く。もっとずっと長く生きて。先生をこの世界で1番長い間。想い続けた人になって死にたい。そうして、先生の1番になる。

それがどれほど幸せか。誰かにいつか、話したい。老いさらばえ、死ぬ間際の、せん妄の空想ばなしとして。