:.

部屋に溢れる時間にへばりつく。

先生、夢を見たんです。背骨から腰にかけて流れるものがあって、それが。割れ、砕けて、腐葉土の養分になる。その泥水をすする人が笑う。先生、わたし夢を見たんです。

夢は、祈りからも追放された私を笑う。

ねえ、今の人はどう?まだあんた、先生とかたわごとを抜かしてるんじゃないでしょうね、そんなこともうやめて、幸せになったらどうなの?もう何もならないじゃない。だめ、やめて。幼児みたいに何度も同じ言葉を言わないでよ。その偏屈なこだわりはあんたに何一つ与えてないのに。ねえやっぱりこのパスタにしなきゃよかった。クリームがねちょねちょしてて、デンプンと絡まってしまって、まるで牛脂みたい。ここはダメね、もう一生来ない。次はあそこ行きましょうよ。岩倉のアピタの裏。食べ放題があるところ、なんだったっけ、キャナリー...

ロウ。キャナリーロウ。

そうそう、ロウ。評判もいいし、昔からあるから絶対美味しいに決まってる。クリームだってこんな牛脂みたいなのじゃなくて、サラサラして白いスープみたいなのだといいわ、今日はとんだ災難、こんなパスタ。不満をあげたらキリがない。ああ、そんなことより今の人の話聞かせてよ。なんだっけ、出版関連?よくわからないけど学歴もいいみたいだし今までの男たちよりよっぽど良い。あんたは本当変な男しか捕まえないから呆れてた。前の彼だって酷かった、あの時のあんた見てられなかった。それにあの時だって

先生。夢を見たんです。私が私を再構築する様を。その大役を任せる人が笑う、夢を見たんです。捏ねたパンと、捏ねた泥を区別する私がいる夢を。

鳥やヤマアラシや窮鼠に小指の爪のかけらまで食べられてしまう物語を書く自分を想像する。

私のパスタは真っ赤なトマト味で、散らばったチーズはガムみたい。

目の前のクリームパスタは私によく似合いそう、あのパスタの一本一本でニットでも編んで寝る前に着たら布団に潜るの。

真っ白な夢でした。

全ては白紙のまま。白いクリームで文字を書く、白紙は重みで軋んで、いつかどろりと破れる。地面に落ちた白、白、白白を大口を開けて手と顔を使って食べてやろう。先生の白衣を足元から食べて跡形もなくなる、最後の一本まで。

甘くて苦くてしょっぱい。泣いて、ほどいて、結んだら

私に賛辞を