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先生、大野先生。目も鼻も口も、手も背中も、髪質も髪型も、線香の匂いも、革靴で靴擦れした裸足の踵も、先生が本に付箋を付けることも、字があまり綺麗でないところも、私と本の話をしてくれたことも、おすすめの本をピックアップしてくれたことも、パソコンをタイピングするときの癖も、画面を見て私を見ない時の横顔も、診察室を開ける手も、閉めた時にかける鍵の音も、先生の歩く音も、笑った時の癖も、教授回診の時の微妙な顔も、私に本の感想を聞いてくれたことも。いつも真っ黒な服を着て、その上の真っ白なしなびた白衣も、最後にした、指切りげんまんも。その感触も。全部私は覚えています。

私は覚えてる。先生が私の前からいなくなって、ずいぶん経っても、いつまで経っても、どれだけ経っても、私は忘れない。忘れられない。どうして、どうしてなの。先生の世界に、もう私はいないのに、私の世界に先生はもういないのに、会えもしないのに、どこにいるのかさえ知らないのに。どうしてよ。なんでこんなに覚えてるの。なんで忘れないの。なんで、思い出すたびに、泣いて、私はいつも強がって、綺麗な言葉で纏めようとして、ほんとうはこんなぐちゃぐちゃで、支離滅裂で、言葉ですら私を救えないのに、かっこつけて、気張って、前に進もうとしない自分を、蹴って蹴って、わかったふりして、小利口なふりして、いろんな言い回しで自分を綺麗にみせて、こんな誰も見ない場所ですら、わたしは言葉で遊んで、飾って、こんな。なにも綺麗じゃない、なにも美しくない、こんなバカみたいな私は、なにをしたってもうどうしようもないよ、悟った顔して、頭のいいふりして、私はどうして、先生が好きだった、大野先生が大好きだった。ただそれだけの純粋な出発から、こうもこんがらがって、大好きな先生が居なくなった今、私にあるのは、先生がまだ大好きなこんがらがった私だけで。なにが私を救えるのかわかんなくなっちゃって。バカみたい。私はバカだから、好きを好きじゃないにする方法も、好きを過去形にする方法もわかんなくて、私の想いはこの世界に不要なことだけが、それだけがバカな私にもわかることで。だったらなんで、まだ泣くの、どうして泣くの。3年半以上も経った今、なんでこんなに涙が出るの。わたしってほんとバカ。大野先生、私はまだ先生のことが好きです。先生のことが好きなんです。バカな私は、こんなに間違っちゃった。許してよ、私。