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先生、今なにをしていますか。今日は平日だから今ごろ診察室にいるのでしょうか。お昼はなにを食べましたか。明日はなにを食べますか。先生は今、生きていますか。

今日で先生が私の前から居なくなって、4年と1ヶ月と1日です。

きのうは、同僚に紹介された男性と、水族館へ行きました。

何度も見たことのある魚を目で追って、正気ではなさそうな尾びれの動きに怯えては、息継ぎのように別の水槽へ目線を逸らす。

私は慎重に振る舞う。できるだけ私の内部を出さないように。くるくる笑って、ことばの端を拾って、真っ当なことを言う。

過去の話ははぐらかす。そんなことより。ねえ、あれを見て。面白い魚。私アイスが食べたい。こんなに寒いのに熱ってしまった。

ある程度の謝罪と、リアクションを大きくした感謝。ありがとう、嬉しい。自然な範疇で繰り返す。壊れた玩具ではなく血が通ったオウムのように。

なにを考えているかわかりやすい女になる。私の内部を探ろうとする彼の話は速やかに曖昧化させる。

質問ができないほどの回答を口角にばら撒いて、相手の口を捻る。

私の全ては先生に話してしまった。私の無様な泣き顔は全て先生に捧げてしまった。自身の破滅。

もうなにもかも終わってしまったんだ。永遠のおしまい。最後のページまで読んだ、続編のない物語。

私の物語は終わった。作者が匙を投げた終わりかた、主要人物を消して、丸め込んだ自暴自棄。それでも人生が続いている、これはどのようなことだろう。

時間を消費した男が私をドライブへ誘う。今すぐに帰りたくなる、どこか、どこでもいい。帰る。その帰る場所がどこかにある気がする。自室の荒れたベッドの上でもなければ、母親の腕でもない。あの頃、母の胎内、その前。

惨めだとは思わない、野良犬の吐瀉物のように。ありふれた小説の1行にすら満たない人生を。