先生との最後の診察室に私の身体は置いてきた。
片思いなんて綺麗なものではないこれを。執着より悲惨な反吐を。愛にすらなれない形骸化した残骸を。
インターネットの片隅に転がして、埃が被ってはぬぐう、無意味な単純作業を。黙々と。
沈黙は心地良い。それで首を吊ります。何度も、性懲りも無く、飽きもせず。
好きだ。ともいえなかった。それを言っては先生の患者から外されてしまっていたでしょう。
それを知っていた私は笑ったのです。飄々と。流れる時間を掬わずに眺めた。
先生、大野先生。私は抗います。前に進むことを、先生を忘れることで、この途方もなく、着地地点もない苦しみが無くなるのなら。
私は一切の進む行為を拒否したい。
先生の記憶を眺めて、口に入れて。
私のよだれで光ったそれを、美しいと思う。
いつか私が死ぬ時に発する最後の言葉が、先生の名前だったらなら、私の一生はそこで報われます。
私は待ちます、先生。
先生は、いま、生きていますか。