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先生、お久しぶりです。

先生が私の世界で死んでから今日で2年と半年と1日が経ちました。

先生の不在が積み重なった今、血流が行き渡っていない痺れた皮膚をむやみに摘んで持ち上げている気持ちがします。

あんなにも緻密であった記憶が時間の分厚いフィルターで先生の思い起こす声すら遠くて、これを、もう忘れてしまったことにするのは容易いのに、私はその理屈を拒否したい。

先生が私の世界の関与者であったひとときを何度も再生します。擦り切れないように最新の注意をして、涙で汚さないように真っ当な人間の顔をして、何度も。

人間が頭の表面で自由に閲覧できる記憶があまりにも少ないこと、私はそれをわかっています。

先生はもう私の名前も顔も忘れてしまったでしょう。

先生が忘れたのならその分その時間があったことを知っている人間は私だけです。

孤独の再生作業を黙々と、いつかいっときの幸せを感じた時、自分自身にみせつけられるように。

笑ってください、先生。

先生はどうか笑っていてください。

好きな人と結ばれて、幸せを浴びて、笑ってください。

どうか、私のことなど脳裏にも存在させないで。

私に向けた笑顔なんてもうこの世にないのだから。

先生が私に向けてくださった笑顔は私だけ知っていればいい。2人で笑った言葉は私だけが抱えていればいい。

笑ってください、先生。