大野先生の後に来た男の人は言った。
それが好きということなんだと、キミは僕が好きなんだよ、それが好きと言う気持ちなんだと。
そうなのか。と思った、私には人から教えられないと、好きがわからないのか。そう思った。
今の男の人も言った。あなたからメッセージが来ると朗らかになると言うと、それが好きということだ、あなたは俺を好きなんだよと。
そうなのか。と思った。私はきっとこの人が好きなのだ。人に教えられないと私には分からないのだと。
大野先生は何も言わなかった。私は好きだった。好きというものは、苦くて苦しかった。気持ちが悪く汚く、泥臭く。救いがなく、嗚咽が出るものだった。
私は大野先生が好きだった。男の人たちは私に恋を教えようとする。私は驚いた顔で、彼らの喉元を見る。
喉元は小さなコブのように張っていた、言葉を話すとそれが動いた。きっと今に皮膚を突き破ってきて、私を殺す。
きっとそこから飛び出てくるものは。苦く、生臭く、気持ちが悪く、泥臭いものなのだろう。
不潔で品がなく、私では到底救えない未来だろう。
仏は泥の上に座るという。
私は座る先生の屍の上に。どろどろと溶けた、異臭を放つものの上で深呼吸をする。
そして、心底、安心する。